東埼玉新聞社
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  2016.1.5(火)

 八潮市八條~霊園計画に町会挙げて反対

 
 
白いボードとベニヤ板の2枚が墓地建設の告知。反対の看板も
 八潮市八條幸之宮地区のリサイクルプラザ(粗大ごみ処理施設)と最終処分場に隣接した土地に霊園建設が計画されており、地元の幸之宮町会(福野幸央会長)が絶対反対を掲げ八潮市に計画地の買い取りを求めている。同地区では1994年から両施設が稼働したが、市と町会の間で合意した地域整備が20年経っても一部しか実現していないため、新たな「迷惑施設」が増えることに我慢できないと反発している。さらに道路の拡張工事に反対を表明しているため、今年度事業として予算化されていた工事が暗礁に乗り上げている。
 霊園開発を計画しているのは同市緑町の宗教法人長安寺(田口峰道代表役員、曹洞宗)。同寺は住宅地内にあって拡張できず檀家の要望に応えられないため、(仮称)八潮・八條霊園として約2250㎡の敷地に620基を整備する。この地域は市街化調整区域で地目は雑種地。

 地域整備のために計画地の買い取りを要望
 町会は昨年6月に計画地の買い取りを要望した。理由の背景はリサイクルプラザ建設時に、住民から隣接地の買い取り要望があれば市が対応する取り決め。もちろん地権者の申し出が前提であるが、「住民が困っているのだから何とかしてほしい」と言う気持ち。実際に市が買い取ったケースもあるが、2003年に要望したが未だに問い合わせすらない住民もいる。「書類は担当課の金庫に眠っているんじゃないの」と呆れている。町会への回答はまだない。 

 申請あれば許可せざるを得ない、買い取りは無理
 計画は市との事前協議段階で、寺は地元住民への説明会を行い、計画地周囲の地権者から出された意見書にも回答している。住民は市との約束である環境整備のほか、墓地による環境の悪化を反対の理由としている。これに対し寺側は地域計画が決定されておらず事業とは無関係で、墓地は公益性のある事業と主張している。両者は平行線の状態で年を越した。
 市の担当者は「住民の反対理由に合理性がないように思う」と述べ、町会からの買い取り要望については「土地は目的がないとダメだし今は財政的にも無理」と、市が定める開発の条件をクリアすれば申請を受け付ける方向でいる。許可せざるを得ないということのようだ。

 住民の不信、タイミングよく施行規則改正
 住民の怒りに火を付けたのは、最終処分場に繋がる市道を幅員4mから6mに拡張するための用地買収が完了した直後の2015年5月、「霊園建設予定」の看板が突然出たこと。霊園は6mの公道に面していなければ許可にならないため、用地買収に応じた地権者は地域の整備に協力したつもりが霊園建設に利用されたと受け止め、市の対応にも不信を抱いている。
 さらに、墓地開発に関する施行規則を昨年4月に改正したことがある。
同市の墓地等の経営の許可等に関する条例は、設置場所の基準として「墓地の境界と住宅や学校等の施設との距離が100m以上離れていること」と制限している。改正は、近年の墓地はほとんどが焼骨を埋蔵する実態に合わせる目的で、条文のただし書「市民の宗教的感情に適合し、かつ、公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと認められる場合は、この限りでない」を適用し、距離制限を撤廃した。遺体をそのまま埋葬するかつての土葬とは違い、公衆衛生上の不安はなくなったが、地域整備の構想や住民の安寧を含むであろう「その他公共の福祉」への理解はゼロ。条例改正という議会審議を避けて施行規則を改正したのではないかと住民は疑っている。
八潮団地通りから墓地計画地に抜ける市道。右下は拡張されている。左の塀は取り壊して拡幅する
 この改正で住宅のほか公園、学校、老人福祉施設などの隣にも墓地が設置できる。
 墓地に関する権限が県から移譲された2006年以降、同市内での墓地開発は初めて。事業者の長安寺は2014年4月に土地を取得しており、それ以前に開発が可能かどうか市に打診していたはずで、規則改正は翌年4月に行われた。

 予算が付いている今年度の道路拡張工事ストップ
 八潮団地通りから墓地の予定地に至る市道は現在の幅が4m。6mに拡幅するための用地買収を昨春に終え、今年度に工事を行う予定だった。
 墓地建設に反対する町会は、工事の着手にも反対している。このため市は「地元の賛成が得られないと着工できない」と今年度の工事を断念しつつある。来年度にずらすため予算を繰り越し明許するか、3月議会で減額補正して中止するか、悩ましい検討を迫られている。
 この道路拡幅は地元が要望してきた案件だけに、町会にとって「着工反対」は苦渋の選択。ある役員は「地域の環境を守るためには止むを得ない」と腹をくくっている。6m道路が完成しないと、墓地の営業は許可にならないからである。

 16人中11人が反対、市への売却「解約したい」
 計画地から100m以内の地権者は16人おり、道路拡張用地を提供した地権者が数人いる。絶対反対を表明しているのは11人。必ずしも住民の全員が反対と言うわけではない。町会としては「反対」を集約している。昨年に契約した地権者は「地域整備のためと担当者から懇願された。今考えれば墓地開発を知っていたわけで、騙されたと言うしかない。できることなら契約を解約し代金も返したい思いだ」と話している。
 また、寺側の代理人らしき人が地権者宅を訪れて協力を要請し、その際「もう、億の金を注ぎ込んでいるので止めるわけにいかない」と述べ、強い決意を示している。住民によっては“脅し”と感じているようだ。

 整備計画なしのツケ? 地下8の新駅が想定されるのに
 同地域は市の基本構想では「環境地域」とされているだけで、具体的な整備構想はない。つくばTXに伴い南部地域は著しく整備が進んでいるのに対し、「北部地域は冷遇されている」といった不満が根強くある。これまで市も住民も八條地区全体の計画づくりに怠慢だったと言わざるを得ない。
 しかし、近い将来、早ければ10年以内に地下鉄8号線が開通する。同線が地下と地上のどちらで伸びてきても八潮団地東側に駅ができる可能性が高い。孫の世代に笑われないために、地域整備計画の策定に着手するときではないだろうか。



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