東埼玉新聞社
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 2012年4月5日第185号)
吉川市監査委員が公共工事契約で異例の意見書
不自然な最低制限価格ピッタリの落札8件
28社中23社が失格、価格設定は合理的か?

 「市が発注する請負工事契約に“不自然さ”が見られるので調査・検討を」―。吉川市監査委員(小泉将平代表監査委員、斎藤詔治監査委員)が昨年秋の定期監査で異例の指摘をし、年明けの1月6日に市長と市議会に報告した。入札・契約の問題は他の自治体では、通常、監査委員が口頭で指摘するケースだが、同市の場合、内容的に酷すぎたのかも知れない。
 監査委員は昨年10月と11月、財政課と教育総務課の建設請負契約の監査を実施した。対象は、仮称・美南小学校建設請負工事契約3件と09年5月から11年7月までに契約した3000万円以上の請負工事契約37件。
監査報告の意見として指摘した内容は、
@09年5月から11年7月までに契約した3000万円以上の請負工事契約37件のうち、8件が最低制限価格と同額で落札され、19件が最低価格に近い金額で落札
A指名競争入札に請負業者の偏りが見受けられる―と指摘し、検討・調査を求めた。
 また報告は、仮称・美南小学校の電気工事の一般競争入札で、28社中23社が最低制限価格を下回って失格となったが、書類を監査した結果「誤りは認められず適正に事務処理がなされていた」とした。しかし、このような場合は、合理的・経済的な設計や積算がなされていない可能性も危惧されるので、状況によっては入札を中止し設計段階に不備がないか再確認する必要があると思料すると記している。
 さらに、入札制度の一層の適正化に向け、低入札価格調査制度、変動型最低制限価格制度の研究を要請している。
 監査報告を受けた市長はどのような対応をするか? 市議会にも報告されたが3月定例会では議論されなかった。
監査委員の斎藤氏は議員任期の2月4日に退任し、大泉氏は3月議会で再任された。

(仮称)美南小学校建設工事請負契約の入札 (3件とも一般競争入札、単位:千円)
工事名 入札数 辞退・失格 契約者 予定価格 最低制限価格 落札金額 差 額 落 札 率(%)
(A) (B) (C) (C−B) (C/B) (C/A)
建築 11社 辞退1・失格1 戸田建設 1,589,000 1,407,870 1,407,990 120 100.008 88.60%
電気 28社 失格23 村川電気工業 293,600 259,220 259,240 20 100.007 88.29%
設備 19社 辞退1・失格3 ナカノヤ 361,500 320,250 320,280 30 100.009 88.59%
2,244,100 1,987,340 1,987,510 170
※電気工事の最低入札額は192,210,000円で、落札額との差額は 67,030,000円

入札データを分析すると不自然さがいっぱい !
 本紙は埼玉県の入札情報データから吉川市の請負工事契約の詳細記録を入手し分析した(監査委員は3000万円以上の契約を37件としていたが実際は38件あった)。結果は当然ながら監査委員の指摘通りであった。
 38件の契約を最低制限価格と落札額の差でみると同額8件、1万円未満3件、1万〜10万円未満7件、10万〜100万円未満8件だった。監査委員の指摘事項以外でも、
1. 5000万円以上を一般競争入札とする市の方針が10件も破られ、指名競争入札で実施されていた。電気、設備工事で目立った。
2. 指名競争入札の選定企業に一定の偏りがあった。協力会以外の企業は指名回数が少なく契約も1件程度 。協力会にはなかなか参加させてもらえない現実も問題なのかも知れない。
3. 専門外の工事に指名しているケースが複数あった。例えば設備工事を専門とする企業が土木や建築で指名されている。それぞれの業種に登録しているので違法ではないが、各業界は住み分けしており行政側から破る例は聞かない。企業数が少ない場合はあり得ることだが、指名もされない企業がある中、極めて不自然に映る。

最低制限価格ドンピシャ 天文学的確率 情報漏れはないか?
 入札では、設計に基づいた予定価格を入札前に一定割合カットした最低制限価格を設定する。封印された封筒に保管され、開札時に公表される。この数字は限られた幹部しか知らないことになっている。
 吉川市の場合、予定価格を公表していない。各企業は工事仕様書で積算するが、最近は積算ソフトが普及しており、予定価格と同額とはいえないまでも極めて近い積算結果が得られるという。
 しかし、予定価格が正確に分からないうえ、カット率は契約案件によって異なるため、最低制限価格を割り出すのは天文学的確率と言われている。38件中8件が最低制限価格で落札された事実をどうみるのか?
 あまりにも不自然で、何らかの情報漏洩が疑われても仕方がないところか。
最低制限価格の近くで発注したことは、見方によっては低額で発注できたことになり、市の利益になる。
 受注競争が激しい昨今、低価格ギリギリでも仕事が欲しい企業がほとんどではないか。
一方、3000万円以下の契約では限りなく予定価格に近い傾向があり、これはこれで問題であろう。

執行部が監査報告に干渉 独立性を脅かす
 今回の監査委員報告の作成については、執行部の“抵抗”があった。監査委員2人が意見をまとめたところ、事務局が難色を示したのである。監査委員事務局長は総務部庶務課長が兼務しており、総務部長も交えて一カ月ほどやり取りがあった。
 最後は文言を簡略に整理してまとめた。監査委員が指摘しようとした内容は抽象的になった嫌いがある。
 監査委員は市民の付託を受けた独立機関であり、市民に直接責任を負う。この義務と権能に執行部が干渉することは、言語道断である。監査委員制度の形骸化がいわれ、外部監査の必要性が強調される背景がここにある。監査の必要性と重要性を考えれば、独立した組織を確立することが喫緊の課題であろう。
 小さい自治体では監査委員事務局を市長部局が兼務するケースが多い。公平委員会、選挙管理委員会も同様だ。議会事務局はそれなりの独立性をもっている。しかし、市長部局からの出向であるため、ややもすると本籍の市長部局におもねる傾向さえある。
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